冷却塔(クーリングタワー)の清掃を「年1回」と覚えている方は多いと思います。半分正解です。年1回と決まっているのは清掃で、点検は1か月ごと。法令と指針を並べると、必要な回数と中身がはっきりします。
建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)の管理基準は、冷却塔についてこう定めています。
冷却塔・冷却水の水管・加湿装置の清掃は、それぞれ1年以内ごとに1回
冷却塔と加湿装置は、使用開始時および使用期間中1月以内ごとに1回、定期に点検し、必要に応じ清掃・換水等を行う
空気調和設備内の排水受け(ドレンパン)も、使用開始時および使用期間中1か月以内ごとに1回、定期に点検し、必要に応じ清掃等を行う
冷却塔・加湿装置に供給する水は、水道法第4条に規定する水質基準に適合する水(原則として水道水)とする
清掃は年1回、点検は月1回。ここを混同すると、1年間まったく蓋を開けないまま夏を越すことになります。
建築物衛生法の管理基準は「特定建築物」にかかります。興行場・百貨店・店舗・事務所・学校などの用途で、同一の建築物で延べ面積3,000㎡以上(学校は8,000㎡以上)が目安です。
小さなビル、工場、小規模な施設は、この法令の対象外になることがあります。ただし次に挙げる厚生労働省の指針は、対象外の建物にも当てはめて考えるべき内容です。
「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年厚生労働省告示第264号)は、冷却塔について構造と維持管理の両面から書いています。
構造設備上の措置(第三 二)では、「外気取入口、居室の窓及び人が活動する場所から十分距離を置くなどして、エアロゾルの飛散をできるだけ抑制すること」。あわせて、エアロゾルの放散量が少ない構造のものを採用することが求められています。
維持管理上の措置(第三 三 2)では、「使用開始時及び使用期間中は一か月に一回以上、冷却塔及び冷却水の汚れの状況を点検」「一年に一回以上、清掃及び完全換水を実施すること」。必要に応じ殺菌剤等を冷却水に加えて微生物や藻類の繁殖を抑制すること、とも書かれています。
法令の条文は「清掃」ですが、指針は「清掃及び完全換水」です。水を抜かずにブラシを当てただけでは、指針が求める水準には届きません。
残留塩素濃度:2〜5mg/Lに維持すれば、レジオネラ属菌に対する殺菌効果が得られる
多機能型薬剤:初期導入濃度100〜500mg/L、維持濃度も100〜500mg/L
レジオネラ属菌:100CFU/100mL以上が検出されたら直ちに洗浄。洗浄後は検出限界以下(10CFU/100mL未満)であることを確認
外気取入口からの距離:10m以内の冷却塔、または飛散水が届くと考えられる冷却塔は要注意対象
「10m以内」は、自社の冷却塔を見に行けばその日のうちに判定できます。まずそこからです。
厚生労働省の維持管理の資料に、物理的清掃の流れが書かれています。
冷却水の循環を停止した後、冷却塔下部水槽の水を排出する
冷却塔内部の汚れは、デッキブラシ等を用いて洗い流す
充填材の汚れは、高圧ジェット洗浄で落とす
洗浄排水は冷却塔の排水口から排出し、冷却水系に混入しないようにする
清水を張り、運転を再開する
4番目が要点です。せっかく落とした汚れを系内に戻すと、清掃した意味がなくなります。
長期停止からの立ち上げ。数日以上にわたる長期停止後の運転開始時には、冷却塔の殺菌処理を行うこととされています。冷房期の初日にいきなり回すのがいちばん危ない場面です。年1回の清掃を済ませていても、これは別の話です。
作業者の防護。清掃作業では、保護マスク・保護メガネ・ゴム手袋等を着用させることとされています。冷却塔の清掃は、飛沫を最も浴びる作業です。自社で行う場合も、ここは省略できません。
正直に書きます。法令の年1回は最低ラインであって、十分という意味ではありません。
月1回の点検で「汚れの状況」を見て、必要に応じて清掃・換水を行う——法令はそう書いています。つまり、点検した結果が悪ければ、年1回を待たずにやるのが前提です。藻が出ている、水が濁っている、スケールが厚い。そういう状態を見て次の年まで放置するのは、法令の読み方としても誤りです。
薬剤の添加を続けていても、バイオフィルム(生物膜)が充填材に張り付いていれば、その内側までは薬剤が届きません。膜ごと物理的に落とす作業が年に一度は要る、というのが年1回清掃の意味です。
外気取入口・窓・人の通る場所から10m以内かを確認する
月1回、蓋を開けて汚れと水の状態を見る
残留塩素濃度を測る
長期停止後の立ち上げ前に殺菌処理をする
ここまでは、設備担当の方の範囲でできます。
雅堂にご相談いただきたいのは、次のような場合です。
充填材の高圧ジェット洗浄と完全換水を、排水を系内に戻さない手順で実施したい
レジオネラ属菌が100CFU/100mL以上検出され、洗浄と再検査が必要になった
冷却塔だけでなく、浴槽循環配管や給湯設備も含めて施設全体で見直したい
現地を見たうえで「この状態なら薬剤管理の見直しで足ります」とお答えすることもあります。
厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年厚生労働省告示第264号)
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(建築物環境衛生管理基準)
厚生労働省「建築物における維持管理マニュアル」冷却塔の維持管理方法
厚生労働省「特定建築物の定義に関するQ&A」
冷却塔の状態を見てからのご提案になります。現地調査・お見積りは無料です。レジオネラ対策は全国対応しています。
お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月23日