「保健所の指導どおりに消毒したのに、再検査でまたレジオネラ属菌が出た」。入浴施設の管理者の方から、もっとも多くいただくご相談です。
多くの場合、消毒のやり方が間違っていたわけではありません。消毒では届かない場所が残っています。
配管やろ過器の内側にできた生物膜(バイオフィルム)の内部には、遊離残留塩素が浸透しません。浴槽水の塩素濃度を基準どおりに保っていても、膜の中にいる菌には効いていません。
そして浴槽水を入れ替えたあと、膜の中から菌がふたたび水に出てきます。これが「消毒したのにまた出る」の正体です。
厚生労働省の循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルにも、生物膜内に存在するレジオネラ属菌は遊離残留塩素が浸透しにくく、消毒効果が低下すると示されています。
汚れの上から消毒をしても、膜の表面が削れるだけで、内部は残ります。台所のぬめりを、洗わずに漂白剤だけかけて済ませている状態に近いとお考えください。
レジオネラ属菌は、水中のアメーバなど原生動物の細胞内で増殖する性質があります。アメーバの体がもう一枚の壁になり、消毒剤から菌を守ります。
生物膜と細胞、二重に守られている状態です。水の塩素濃度を上げても届きにくいのは、このためです。
検査で採水するのは、多くの場合は浴槽水です。しかし菌が住み着いているのは、ろ過器の内部、循環配管、貯湯槽、打たせ湯やジェットバスの配管といった、水が滞留しやすい場所です。
浴槽水だけを消毒しても、供給元がそのままなら、時間とともに数値は戻ります。
ここまでをまとめると、消毒の前に、生物膜そのものを落とす「洗浄」の工程が必要だということです。
東京都の対策資料でも、ろ過器・配管の生物膜の除去方法として、高濃度塩素処理(40〜50mg/L 程度で5〜8時間程度の循環)や過酸化水素処理(専門業者に依頼)が挙げられています。日常の消毒とは別の工程として扱われている、という点が重要です。
再検出が続いている場合、その前に確認したいことが2つあります。
遺伝子検査(PCR法)は、死んだ菌も拾います。東京都の資料には「消毒後は、すすぎを十分に行う」という注意があり、その理由として「遺伝子検査で、死菌を検出してしまうため」と説明されています。
消毒の直後に採水すると、処理は効いているのに数値が出ることがあります。
前回と今回で採った場所が違えば、数字は比較になりません。どこから採るかを記録に残し、毎回同じ地点で採ってください。
次のいずれかに当てはまる場合は、消毒の回数を増やすよりも、配管の洗浄を検討したほうが早く収まります。
・消毒後2〜3週間で再検出する
・塩素濃度は基準内で推移している
・ろ過器や配管を数年以上、内部まで洗浄していない
・打たせ湯・ジェットバスなど、気泡を発生させる設備がある
逆に、消毒の直後に採水した、採水地点が前回と違う、という場合は、条件をそろえて再検査をするのが先です。
なお、塩素濃度を上げ続ける対処はおすすめしません。生物膜の内部には結局届かないまま、配管や金属部品の腐食、利用者からの刺激臭の苦情のほうが先に出ます。
厚生労働省『循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルについて』
東京都保健医療局『レジオネラ対策講習会② レジオネラ属菌検出時等の対応について』
配管の内部は、外からは見えません。雅堂では施工前に内部を確認し、洗浄前後の状態を写真でお渡ししています。「消毒しても再検出が止まらない」という段階でしたら、一度ご相談ください。現地を見る前でも、次に何を確認すべきかはお伝えできます。
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執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月12日