結論から書きます。アルコール(消毒用エタノール)はカビにも効きますが、効くのは「かけた瞬間、そこにいる分」だけです。残る力はありません。そして濃度が違うと効き方が落ちます。
雅堂には「カビにアルコールをかけたのに、また出てきた」というご相談がよく届きます。効かなかったのではなく、効く範囲を超えていた、というのがほとんどです。
厚生労働省の研修資料では、エタノールは76.8〜81.4%の濃度が最も消毒効果が高いとされています。
薄すぎると足りないのは想像しやすいと思いますが、実は濃すぎても落ちます。アルコールは菌のタンパク質を変性させて効きますが、この反応には水が要ります。無水エタノール(99%以上)をそのまま使うと、水が足りず、かえって効きにくくなります。
家にある「消毒用エタノール」は、はじめからこの濃度帯に調整されたものです。無水エタノールを買ってしまった場合は、精製水で薄めて使います。
同じ資料では、エタノールは芽胞形成菌以外の微生物に有効で、ノンエンベロープウイルスには効きにくいとされています。消毒薬の分類では「中水準消毒薬」にあたり、ほとんどのウイルスや真菌(カビ)を殺菌する位置づけです。
つまりカビに対しては、効きます。効かないのは芽胞をつくる菌と、ノロウイルスのような一部のウイルスです。
カビに効くのに再発するのは、アルコールに次の三つの限界があるからです。
1. 残らない
アルコールは数十秒で蒸発します。蒸発した後の面は、また新しい胞子が着く普通の面に戻ります。空気中には常にカビの胞子が浮いていますから、条件が変わらなければ同じ場所に同じものが出ます。
2. 汚れの上からは届かない
皮脂や石けんカス、土の有機物が載っていると、アルコールはそこで消費されて菌まで届きません。消毒の前に洗って落とす、という順番が要ります。落としてから抑える、この順番が逆になっている例をよく見ます。
3. 中まで入らない
パッキンのゴム、木、壁紙の裏、土の中——カビが素材の内側に菌糸を伸ばしている場合、表面にかけても届きません。表面が白く消えても、中が残っていれば必ず戻ってきます。
消防庁のリーフレットでは、消毒用アルコールについて次の点が示されています。
火気に近づけると引火しやすい
発生する可燃性蒸気は空気より重く、低いところにたまりやすい
密閉した室内で多量の噴霧を行うことは避ける
通気性の良い場所、換気が行われている場所で行う
直射日光が当たる場所や高温となる場所での保管は避ける
浴室やキッチンのように狭くて火のある場所は、この注意がそのまま当てはまります。広い面にスプレーで撒く使い方は、効果の面でも安全の面でも向いていません。
カビは湿度が下がれば増えません。建築物衛生法にもとづく建築物環境衛生管理基準では、空気環境の基準のひとつとして相対湿度40%以上70%以下が定められています。これは大きな建物に課される基準ですが、家庭でも目安として使えます。
湿度計をひとつ置いて、70%を超える時間を減らす。これがアルコールより確実です。
風呂は使用後に換気扇を回し続ける
鉢の受け皿に水をためたままにしない
家具と壁の間を数センチ空ける
押し入れは時々開ける
正直に書きます。鉢の土の表面や、浴室の目地の表面程度であれば、業者を呼ぶ必要はありません。洗って落として、乾かして、湿度を下げる。それで足ります。
雅堂にご相談いただきたいのは、次のような場合です。
洗っても数週間で戻る(素材の内部に入っている可能性があります)
エアコンの内部のように、分解しないと届かない場所
天井や壁の広い面積
どちらなのか判断がつかないときは、現地を見てからお伝えします。見た結果「これはご自分でできます」とお答えすることもあります。
厚生労働省 令和5年度薬剤師の資質向上等に資する研修事業「感染対策に関する指針・研修プログラム」
総務省消防庁「消毒用アルコールの安全な取扱いについて」
厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」
カビの状態を見てからのご提案になります。現地調査・お見積りは無料です。
お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月23日