湿気が多いとカビが生える。間違いではありませんが、粗い。
どのくらいの湿度で、何度で、何を栄養にして生えるのか。文部科学省がまとめた資料に、数字で書かれています。
この記事では、その数字をそのまま並べます。法令の話は別記事に書きましたので、ここではカビそのものの条件を扱います。
文部科学省の「カビ対策マニュアル」です。基礎編と実践編に分かれています。
もともとは、博物館や図書館の資料をカビから守るために作られた文書です。住宅向けではありません。
ただ、カビの生理は資料でも住宅でも同じです。数字はそのまま読めます。
微生物が使えるのは、物質の中の自由水だけです。その量を表す指標が水分活性(Aw)です。
基礎編は、こう説明しています。試料を入れた密閉容器内の平衡相対湿度が九十パーセントならば、Awは〇・九となる。
そして、こう書かれています。通常では対象とする物質のAwを〇・六以下に保持するとカビは全く生育できない。これを維持するために環境の相対湿度を温度変化に拘わらず常に六十パーセント以下に保つことが必要である。
六十パーセント。これが一つめの数字です。
ただ、種類によって必要な水分は違います。基礎編の表から、カビの最低Awを並べます。
ケカビ〇・九三。クモノスカビ〇・九四。青カビ〇・八三。黒麹カビ〇・八八。そして乾性カビ(好乾菌)は、Aspergillus repens が〇・六五、Aspergillus ruber が〇・六五。
つまり、相対湿度六十五パーセントでも生える種類がいます。うちは七十パーセントくらいだから大丈夫、という言い方は成り立ちません。
基礎編の表には、カビの生育可能温度領域は〇から四十度、生育最適温度は二十五から二十八度、とあります。
本文も同じことを言っています。通常のカビや酵母は〇度以下または四十度以上にすると生育不可能である。しかし、〇度近傍では生育速度が非常に遅いが、半年あるいは数年後に目視で観察されるまでに生育する低温カビも存在する。
二十五から二十八度。人が快適だと感じる温度と、ほぼ重なります。
ここが厄介なところで、温度でカビを止めることは住宅では現実的ではありません。だから湿度で止めることになります。
基礎編はこう書いています。カビは空気(分子状の酸素)の存在無くして生育不可能である。
そして、除酸素や窒素置換した環境では全く増殖できない、と続きます。
ただし、この直後に重要な注意があります。無酸素あるいは窒素環境下においてもカビ胞子は死滅せず生存しており、酸素環境条件が調うと直ちに発芽して増殖をすることに注意を要する。
住宅から酸素を抜くことはできません。この条件は対策には使えない。ただ、胞子は簡単には死なない、という部分は覚えておく価値があります。
pHについては、カビの生育可能pH領域は二から八・五であり、最適pHは四から四・五、とあります。
栄養については、基礎編がはっきり書いています。カビは、衣食住や工業製品のほとんどを栄養源として分解・劣化させる。さらに、カビは天然有機物や人工有機物のみならず無機物や鉱物までも栄養源としており、と。
家の中に、カビが食べないものはほとんどありません。埃と皮脂があれば足ります。
ここまでを整理すると、四つの条件のうち住宅で現実的に動かせるのは、水分と栄養の二つだけです。栄養を減らすというのは、要するに掃除のことです。
基礎編に、こんな一文があります。
カビ被害は不可逆的(一方通行)な生物反応で、決して元に戻らない劣化であることに改めて注意する必要がある。
黒い点が消えないのは、色素が沈着しているからだけではありません。素材そのものが酵素で分解されています。
だから、生えてから取るより、生えない条件を作るほうが安くつきます。当たり前に聞こえますが、条文のような形で書かれているのを見ると、重みが違います。
実践編に、作業時の注意があります。住宅の話ではありませんが、考え方はそのまま使えます。
まず、吸い込みについて。カビ胞子は殺菌してもアレルゲンであるので吸入量をできる限り抑制することが必要である。
薬剤について。殺菌剤は、エタノールも人体毒性があり、その他の薬剤は人体に有害性が高いものが多いので、取り扱いには十分注意する。
手順の最初の二つは、汚染が拡大しないように作業区画を廃棄可能な素材で仕切ること、そして記録写真をとること、とされています。
掃除機については、HEPAフィルター付のものにする、とあります。
そして後始末。拭き取りに用いた布等は厚手のポリエチレン袋を二重にした袋に入れ、しっかり口を絞め、すみやかに焼却処分の手配をする。
文化財向けなので厳しめですが、順番は同じです。区画する。散らさない。吸わない。使った布を残さない。
実践編の終わりのほうに、まとめのような一節があります。
カビ被害を回避するには、何よりも生えにくい環境を整えることにある。資料表面のクリーニングは専門の技術者であっても難しく、また人間が利用できる空間として酸素濃度は下げられないため、カビ発生抑止のために採用できる方法は、カビが利用できる水分量を低減して、温度設定を見直し、発生速度を遅くすることである。また同時に、大気からの塵埃により資料表面に栄養物が蓄積され、また外気から胞子に汚染された空気が流入する場合もあるため、空気清浄化を計画することが重要である。
水分を減らす。温度を見直す。埃をためない。空気をきれいに保つ。この四つです。
ここからは当社の話です。
六十パーセント。湿度計を一つ置いてください。ただし部屋の中央ではなく、壁際、押入れの中、家具の裏。カビが出るのはそこであって、部屋の中央の数字は当てになりません。
〇・六五。好乾菌がいる以上、乾いているように見えるから大丈夫、とは言えません。押入れの奥、本棚の裏、クローゼットの隅。空気が動かない場所は、実際の湿度が部屋の数字より高いことがよくあります。
二十五から二十八度。日本の梅雨から夏は、この最適温度帯にそのまま入ります。逆に言えば、この時期だけ湿度を意識すれば、かなり違います。
不可逆。黒くなってから相談をいただくことが多い。そのときは、落とせる範囲を先にお伝えします。素材まで分解されている箇所は落ちません。落ちないものは落ちない、と申し上げます。
正直に書きます。
当社の防カビコーティングが効くのは、四つの条件のうち栄養と、表面でのカビの定着に対してです。水分と温度は建物側の条件で、コーティングでは変えられません。
ですから、結露が続いている部屋に施工しても、いずれ再発します。そういう部屋では、先に断熱や換気の話をします。工事が先だと判断した場合は、そのようにお伝えします。
逆に、水分の条件が整っている部屋であれば、コーティングは再発までの時間をかなり延ばします。見極めは現地で行います。
文部科学省のカビ対策マニュアル基礎編によると、カビは対象物のAwを〇・六以下に保持すると全く生育できず、そのためには環境の相対湿度を温度変化に拘わらず常に六十パーセント以下に保つことが必要とされています。
ただし乾性カビ(好乾菌)の最低Awは〇・六五で、青カビは〇・八三、黒麹カビは〇・八八です。
生育可能温度領域は〇から四十度、生育最適温度は二十五から二十八度。〇度近傍でも半年あるいは数年後に目視できるまで生育する低温カビが存在します。
カビは酸素なしには生育できませんが、無酸素環境でも胞子は死滅せず、酸素が戻れば直ちに発芽します。
生育可能pH領域は二から八・五、最適pHは四から四・五。栄養源は衣食住や工業製品のほとんどで、無機物や鉱物までも含みます。
そしてカビ被害は不可逆的な生物反応で、決して元に戻らない劣化である、とされています。
住宅で動かせるのは、水分と栄養です。
株式会社雅堂では、天井・壁・店舗の防カビ施工を行っています。まず湿度と結露の状況を伺い、施工が有効かどうかからお話しします。建物側の工事が先だと判断した場合は、そのようにお伝えします。
お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月17日