浴槽は毎日洗います。壁も床も洗います。
けれど、追い焚き口の奥、配管の中を洗った記憶はありますか。
公衆浴場の配管については、法令も通知も整っています。では家庭はどうなのか。実は、家庭の水まわりを調べた公的な記録があります。
この記事では、厚生労働省の資料と、そこで報告された家庭内の調査結果をもとに、家庭の追い焚き配管で何が起きているのかを整理します。
厚生労働省のレジオネラ対策研修会で、神奈川県衛生研究所(渡辺祐子・黒木俊郎)が家庭内のレジオネラ検出状況を報告しています。
調査は平成二十五年七月から十月。対象は、五家庭の台所、浴室等の水試料、スワブ及びその他五家庭の水槽水、合計百十四検体です。
結果です。
培養法では、百十四検体中六検体(五・二パーセント)から菌が分離されました。
LAMP法では、百十四検体中二十二検体(十九・三パーセント)が陽性でした。
アメーバ増菌培養では、九十一検体中二検体(二・二パーセント)から菌が分離されました。
検出された場所として挙げられているのは、浴槽水、洗面蛇口、池、洗濯機、ロータンク、浴室、使用頻度の低い蛇口、トイレ、水槽です。
特別に不衛生な家を選んで調べた、という調査ではありません。ふつうの家庭です。
この報告の結論部分に、こう書かれています。
浴槽水中に存在している場合、洗濯水等に利用すると、利用先へと移動するばかりでなく、使用したホース中へも残留している。
注目してほしいのは後半です。ホースの中に残る。
使い終わって、水を抜かずに丸めて置いたホース。中には浴槽の水が残り、室温で温まります。次に使うとき、その水が最初に出ます。
残り湯の洗濯利用をやめてください、という話ではありません。実際、節水の効果は大きい。ただ、洗いの工程だけに使ってすすぎは水道水にする、ホースは使うたびに水を抜いて干す。この二つで、条件はかなり変わります。
厚生労働省の「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」は、公衆浴場向けの文書です。ただ、家庭用にも触れています。
まず、配管について。循環配管の内壁には、ねばねばした生物膜(バイオフィルム)が生成され易く、レジオネラ属菌の温床となります、とあります。
そして家庭用について。家庭用循環式浴槽のろ過装置は、ほとんどのものが小型で、その大半はいわゆる生物浄化装置と考えられます、と書かれています。
そのうえで、微生物学的な安全性を優先すれば、ろ過槽を含んだ浴槽システム全体の消毒には、残効性のある塩素系薬剤等の使用を推奨せざるを得ません、と続きます。
いわゆる二十四時間風呂を含む家庭用の循環式浴槽は、公衆浴場の縮小版として扱われている、ということです。
同じマニュアルに、頻度が二つ出てきます。
ろ材の種類を問わず、ろ過装置自体がレジオネラ属菌の供給源とならないよう、消毒を一週間に一回以上実施すること。
年に一回程度は、循環配管内のバイオフィルムを除去し、消毒することが必要。
週に一回の消毒と、年に一回の配管洗浄。これが公的な文書に書かれている頻度です。
ここは正確に書きます。この頻度は循環式浴槽についての記述で、ふつうの給湯器の追い焚きに法的にかかるものではありません。ただ、配管に水が残り、毎日温まり、内壁に生物膜がつくという構造は同じです。目安として読む価値はあります。
同じマニュアルには、水質の目安も出てきます。
浴槽水中の遊離残留塩素濃度を一日二時間以上〇・二から〇・四mg/Lに保つことが望ましい。
レジオネラ属菌は、十CFU/100mL未満であること。
家庭にこの基準が課されているわけではありません。ただ、どのくらいならよいのか、という物差しにはなります。
ここからは当社が現場で見ている話です。
一つ、入るものです。追い焚きは浴槽の水を吸い込んで、温めて、戻します。吸い込まれるのは湯だけではありません。皮脂、垢、髪、入浴剤、洗い場から流れ込んだ石けん。これが毎日、配管の中を往復します。
二つ、残る水です。湯を抜いても、配管の中の水は抜けません。翌日まで、そこにとどまります。
三つ、温度です。追い焚きのたびに配管は温まります。レジオネラ属菌が増えやすい温度帯を、毎日通過します。
四つ、入浴剤です。にごり湯タイプは粒子が細かく、配管の内壁に残りやすい。悪いものではありませんが、使う家ほど洗浄の間隔は詰めたほうがよいと考えています。
五つ、使わない期間です。旅行、帰省、単身赴任。数週間空くと、止まった水がそのまま配管の中に残ります。
出てくるのは、黒や茶色の細かい塊です。皮脂と石けんカスが固まったものが大半で、ぬめりを伴います。
傾向として、何年も洗っていない家ほど、最初の一回で出る量が多くなります。二回目以降は減ります。年に一回、という頻度に意味があるのはこのためです。
正直に書いておきます。新築から数年の家や、入浴剤を使わずシャワー中心の家では、洗ってもほとんど出ないことがあります。そのときは、そのようにお伝えします。次は何年後でよい、という話もします。
四つあります。
一つ、湯を抜く前に、追い焚きを数分回す。配管の中の水がいったん入れ替わります。抜いてから追い焚きを回すのは空焚きになるので、必ず湯が残っているうちに。
二つ、残り湯用のホースは、使うたびに水を抜いて干す。
三つ、長期間家を空けるときは、出発前に湯を抜く。戻ったら、一度水を張って追い焚きを回し、その水は使わずに捨てる。
四つ、市販の風呂釜洗浄剤を使うときは、追い焚き口がしっかり湯に浸かる水位で回す。水位が足りないと、配管の途中までしか薬剤が届きません。
この四つをやったうえで、湯に細かいカスが浮く、追い焚きのときに臭う、という状態が残るなら、固着した汚れが残っています。そこから先は分解や専用の機材が要ります。
神奈川県衛生研究所が厚生労働省の研修会で報告した家庭内調査では、百十四検体中六検体(五・二パーセント)から培養法でレジオネラ属菌が分離され、LAMP法では二十二検体(十九・三パーセント)が陽性でした。浴槽水、洗面蛇口、洗濯機、使用頻度の低い蛇口などから検出されています。
同じ報告は、浴槽水中に存在している場合、洗濯水等に利用すると、利用先へと移動するばかりでなく、使用したホース中へも残留している、と結んでいます。
厚生労働省の循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルは、循環配管の内壁に生物膜が生成され易いこと、家庭用循環式浴槽のろ過装置の大半が生物浄化装置と考えられること、ろ過装置の消毒を一週間に一回以上、循環配管内のバイオフィルムの除去と消毒を年に一回程度行う必要があることを記しています。
水質の目安は、遊離残留塩素濃度を一日二時間以上〇・二から〇・四mg/L、レジオネラ属菌は十CFU/100mL未満です。
家庭の追い焚き配管に法的な義務はありません。ただ、構造は同じです。見えないだけです。
株式会社雅堂では、家庭の風呂釜・追い焚き配管の洗浄を行っています。築年数、追い焚きの使い方、入浴剤の有無をお聞きして、洗う必要があるかどうかからお話しします。洗わなくてよいと判断した場合は、そのようにお伝えします。
お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636
循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルについて(厚生労働省)
家庭内におけるレジオネラ検出状況(神奈川県衛生研究所・厚生労働省レジオネラ対策研修会資料)
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月16日