レジオネラの発生源は、浴槽だけではない

レジオネラ対策というと、どうしても浴槽と循環配管の話になります。けれども国が示している「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」は、入浴設備のほかに、空気調和設備の冷却塔、給湯設備、加湿器を名指しして、それぞれに構造と維持管理の決まりを置いています。浴槽をていねいに洗っていても、同じ建物の屋上や天井裏に、手つかずの発生源が残っていることは珍しくありません。

結論:指針が名指ししている設備は四つある

指針の第一は、対策の基本を「レジオネラ属菌が繁殖しやすい状況をできるだけなくし、これを含むエアロゾルの飛散を抑制する措置を講ずること」と定めています。そのうえで、衛生上の措置を徹底して講ずべき設備として、入浴設備、空気調和設備の冷却塔、給湯設備、加湿器等を挙げています。

続く第二から第五が、この四つに対応します。第二が入浴設備、第三が冷却塔、第四が給湯設備、第五が加湿器です。そして第六で、それ以外であってもエアロゾルを発生させる機器及び設備には同じ考え方で措置を講ずることが必要だ、と書かれています。

つまり「浴槽の話」は四分の一です。残りの三つは、清掃業者ではなく設備管理の担当者や施設の総務が持っていることが多く、そこで話が途切れてしまいます。

冷却塔:点検は月1回以上、完全換水は年1回以上

指針第三は、冷却塔の維持管理について、使用開始時及び使用期間中は一か月に一回以上、冷却塔及び冷却水の汚れの状況を点検し、必要に応じて清掃及び換水等を実施すること、そのうえで一年に一回以上、清掃及び完全換水を実施することを求めています。

頻度が二段構えになっているのは、浴槽の管理と同じ考え方です。月1回は「見て、必要なら手を入れる」点検。年1回は「必ず全部抜いて洗う」清掃です。必要に応じて殺菌剤等を冷却水に加え、微生物や藻類の繁殖を抑制することも挙げられています。

冷却塔に供給する水は、水道法第四条に規定する水質基準に適合させるために必要な措置を講ずることとされています。井水を併用している建物では、ここが抜けやすい点です。

冷却塔がレジオネラの温床になりやすい理由も、指針は説明しています。冷却水は熱を放出して一部が蒸発するため、炭酸カルシウムやケイ酸マグネシウム等の塩類が濃縮され、スケールとなって充てん剤等に析出します。そこに微生物が付着しやすくなる。加えて冷却塔内は、日射、酸素の供給、大気への開放と、繁殖に好適な条件がそろっています。

だからスケールとスライムは、単なる汚れというより構造的な副産物です。生成を抑制し、除去を行うことが必要である、と明記されています。

冷却塔は、置き場所をあとから直しにくい

指針第三の二は、構造設備上の措置として、エアロゾルの放散量が少ない構造を持つものを採用すること、風向き等を考慮して、外気取入口、居室の窓及び人が活動する場所から十分距離を置くことを求めています。

冷却塔からの排気に含まれるエアロゾルは、外気取入口や窓を介して屋内に侵入し、又は地上に飛散する、と書かれています。国内の報告例は少ないものの、海外では冷却塔を発生源とする集団感染事例が数多く報告されており、感染源として重視する必要がある、というのが指針の立場です。

置き場所は、設置や修繕のときにしか変えられません。更新の予定があるなら、その打ち合わせのときに一度だけでも、外気取入口との位置関係を図面で確認しておくことをおすすめします。

給湯設備:六十度と五十五度、そして滞留

指針第四は、給湯設備については湯温の制御が最も必要であるとしたうえで、貯湯式の給湯設備や循環式の中央式給湯設備を設置する場合は、貯湯槽内の湯温が六十度以上、末端の給湯栓でも五十五度以上となるような加熱装置を備えることが必要である、としています。

もう一つの軸が滞留です。湯水が貯湯槽や給湯のための配管内で滞留することによって、レジオネラ属菌をはじめとする微生物が繁殖しやすくなる、と書かれています。

そのため構造面では、滞留水を排水できるよう貯湯槽等に排水弁を設置すること、循環式の中央式給湯設備では設備全体に湯水が均一に循環するよう流量弁等を設置することが求められています。

維持管理面では、貯湯槽等に滞留している湯水を定期的に排水すること、一年に一回以上、貯湯槽等の清掃を実施すること、そして循環ポンプや流量弁を適切に調整することが挙げられています。

「均一に循環するよう調整する」は、設置したら終わりではありません。系統を増やしたり、客室の一部を長期閉鎖したりすれば、流量のバランスはその時点で変わります。

加湿器:使い始めと使い終わりに、水を抜く

指針第五は、加湿器を、建築物の空気調和設備に組み込まれている加湿装置と、家庭等で使用される卓上用又は床置き式の家庭用加湿器に分けています。

加湿装置については、使用開始時及び使用期間中は一か月に一回以上、汚れの状況を点検し、必要に応じ清掃等を実施するとともに、一年に一回以上、清掃を実施することとされています。冷却塔と同じ二段構えです。

そして加湿装置に固有の決まりが、使用開始時及び使用終了時に、水抜き及び清掃を実施することです。加湿は季節設備なので、動かさない期間が半年近くあります。止めるときに水を残さないこと、動かす前にもう一度洗うこと。この二つが、そのまま対策になります。

加湿装置に供給する水を水道法第四条の水質基準に適合させること、加湿方式に応じた水処理装置を設置し、点検及び清掃を容易に行うことができる構造とすることも挙げられています。

家庭用加湿器は、タンクの水を毎日換える

家庭用加湿器については、タンクの水は毎日完全に換えるとともに、タンク内を清掃すること、とされています。構造の面でも、部品の分解及び清掃を容易に行うことができる構造とすること、と書かれています。

家庭向けの注意に見えますが、指針が想定しているのは施設です。加湿器を発生源とする感染例として、新生児室や高齢者施設が挙げられています。タンクの中で生物膜が生成されることによって微生物が繁殖しやすくなる、という説明も添えられています。

現場で多いのは継ぎ足しです。減った分だけ足す運用では、タンクの底の水がいつまでも残ります。換えるというのは「足す」ではなく「空にしてから入れる」ことです。

名前のない設備は、第六で拾われる

指針第六は、入浴設備、空気調和設備の冷却塔、給湯設備及び加湿器以外であっても、エアロゾルを発生させる機器及び設備について、第一の二に基づき、適切な衛生上の措置を講ずることが必要である、としています。

第一の二とは、①微生物の繁殖及び生物膜等の生成の抑制、②設備内に定着する生物膜等の除去、③エアロゾルの飛散の抑制、という三つの観点です。

噴水や水景施設、ミスト装置、屋外の冷却用スプレー、高圧洗浄機、足湯なども、名指しはされていませんが、水を細かい粒にして飛ばす設備はすべてここに入ります。

名前が出てこない設備ほど、担当者が決まっていません。まずは「この施設で、水を霧やしぶきにしている場所はどこか」を書き出すところから始めてください。

施設の型ごとに、どこを見るか

旅館・ホテルであれば、浴槽と循環配管、中央式給湯、屋上の冷却塔、宴会場やロビーの加湿装置。この四つがそろっている建物が多く、しかも担当が分かれています。

高齢者施設や病院であれば、機械浴槽と給湯、そして加湿器です。指針も、高齢者、新生児及び免疫機能の低下を来す疾患にかかっている者が多い医療施設、社会福祉施設等では措置を徹底することが必要だ、と名指ししています。同じ菌数でも、結果が変わるからです。

日帰り入浴施設であれば浴槽まわりが中心になりますが、冬期の加湿と、使っていない系統の給湯配管が残っていることがあります。

点検表は、設備ごとに行を分ける

一枚の点検表に「清掃」と一行だけ書いてあると、どの設備の清掃なのかが後から分かりません。設備ごとに行を分け、それぞれに頻度を書いてください。

冷却塔は月1回点検・年1回完全換水。給湯は滞留水の定期排水・年1回の貯湯槽清掃。加湿装置は月1回点検・年1回清掃、そして使用開始時と終了時の水抜き。この三行を足すだけで、浴槽に偏った点検表が指針の形に近づきます。

指針第七は、自主管理手引書及び点検表を作成して従業者等に周知徹底すること、日常の衛生管理に係る責任者を定めることを求めています。責任者は設備ごとに違っていて構いません。大事なのは「決まっていない設備」を残さないことです。

まとめ

指針が名指ししている設備は、入浴設備・冷却塔・給湯設備・加湿器の四つ。冷却塔と加湿装置は月1回以上の点検と年1回以上の清掃、加湿装置にはさらに使用開始時と終了時の水抜きが加わります。

給湯は貯湯槽六十度以上・末端五十五度以上と、滞留させないこと。名前の出てこない設備は、エアロゾルを出すかどうかで判断します。

浴槽だけを見ていると、同じ建物の中に手つかずの発生源が残ります。まずは、水を霧やしぶきにしている設備を全部書き出すところから始めてください。

設備の洗浄と点検計画は、雅堂にご相談ください

株式会社雅堂では、浴槽と循環配管の洗浄を中心に、給湯配管を含めた設備の洗浄と、点検計画のご提案を行っています。どこから手をつけるべきか分からない場合も、図面と現在の点検表を見せていただければ整理できます。

お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636

あわせて読みたい

レジオネラ対策は、突き詰めると三つしかない

浴槽だけ見ていても足りない。冷却塔というもう一つの発生源

加湿器の水は、足すのではなく替える。冬の設備が見落とされる理由

レジオネラ対策・配管洗浄

出典

レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針(厚生労働省告示第264号)

レジオネラ対策のページ(厚生労働省)

執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)

更新日:2026年9月15日