「エアコンクリーニング」という同じ言葉で呼ばれていますが、家庭用の壁掛けエアコンと、事務所や店舗の天井カセット型では、作業の中身がかなり違います。
違うのは値段だけではありません。構造が違い、洗う方向が違い、関わる法令まで違います。
この記事では、その違いを具体的に並べます。見積りを比較するときの判断材料にしてください。
家庭用の壁掛けエアコンは、壁の高い位置に本体が付いています。洗浄では前面パネルとフィルターを外し、本体にビニールの養生カバーをかけて、前から高圧洗浄機で洗います。
天井カセット型は違います。本体は天井裏に埋め込まれていて、室内から見えているのは化粧パネルだけです。
作業は、まず化粧パネルを外すところから始まります。パネルを外すと、天井の開口から本体の下面が現れる。そこから上に向かって洗うことになります。
つまり、家庭用は「横から洗う」、天井カセット型は「下から上に向かって洗う」。この一点だけでも、養生の考え方が変わります。
天井カセット型の内部を、上から順に並べるとこうなります。
化粧パネル(室内から見える部分。ルーバー、吸込グリル、フィルターが付く)
ベルマウス(送風ファンに空気を導く円形の部品)
ターボファン(本体中央で水平に回る羽根車)
熱交換器(アルミフィン。ファンを取り囲むように本体を一周している)
ドレンパン(熱交換器の下で結露水を受ける樹脂の皿)
ドレンポンプとフロートスイッチ(溜まった水を汲み上げる部品と水位検知)
電装ボックス(制御基板、端子台。本体側面の上部にある)
ルーバーモーター、各種センサー
家庭用の壁掛けエアコンにも熱交換器と送風ファンはありますが、ドレンポンプとフロートスイッチは通常ありません。排水は自然勾配で外に流れます。
この「ポンプで汲み上げている」という点が、天井カセット型の洗浄をむずかしくしている理由のひとつです。
下から上に向かって高圧洗浄機を当てると、当たった水は跳ね返ります。跳ね返った水は上に飛びます。
上には何があるか。電装ボックスと、天井裏です。
家庭用の壁掛けでは、洗浄水は重力に従って前下方へ落ちます。養生カバーの先にホースを付けてバケツに導けば、それで回収できます。
天井カセット型では、落ちてくる水を受けるだけでは足りません。上に飛んだ水が電装部に届かないよう、本体側面の上部を先に塞いでおく必要があります。
この作業は、外から見えません。作業写真にも写りません。だからこそ、見積りの段階で「電装部の養生をどうするか」を聞いておく価値があります。
万一、天井裏に水が回ると、被害はエアコンでは終わりません。
石膏ボードは水を吸うと強度が落ち、乾いてもシミが残ります。軽量鉄骨の下地は錆びます。上階が事務所なら、床の仕上げに影響することもあります。
そして、天井裏には他の設備も通っています。電気配線、LAN配線、スプリンクラー配管、換気ダクト。水が届く範囲はエアコンの真上だけではありません。
だから天井カセット型の洗浄では、「汚れを落とすこと」と同じ重さで「水を想定外の場所に行かせないこと」が仕事になります。
天井カセット型の作業は、脚立に乗って頭上を扱う作業です。ここには労働安全衛生規則が関係します。
第五百十八条は、こう定めています。
事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等、墜落による危険を防止するための措置を講じることとされています。
また第五百二十六条は、高さまたは深さが一・五メートルを超える箇所で作業を行うときに、安全に昇降するための設備等を設けることを求めています。
脚立についても第五百二十八条に規定があります。丈夫な構造であること、材料に著しい損傷や腐食がないこと、脚と水平面との角度を七十五度以下とし折りたたみ式では角度を保つ金具等を備えること、踏み面は作業を安全に行うため必要な面積を有すること。
天井高が三メートルを超える倉庫や工場、吹き抜けのある店舗では、脚立では届かず、高所作業台が必要になります。この場合は当然、費用も段取りも変わります。
業務用機の多くは三相二百ボルトで、動力用の分電盤から来ています。洗浄中は当然、電源を切ります。
問題は、切ったあとです。同じ分電盤を他の設備と共用していれば、誰かが別の理由でブレーカーを上げる可能性があります。
労働安全衛生規則第三百三十九条は、電路を開路して作業を行うときの措置として、次を挙げています。
開路に用いた開閉器に、作業中、施錠し、若しくは通電禁止に関する所要事項を表示し、又は監視人を置くこと。
施錠するか、表示するか、見張りを置くか。この三つのどれかです。エアコン洗浄はこの条文がそのまま当てはまる作業ではありませんが、考え方は同じで、「切った」だけでは足りず「上げられない状態にする」ところまでが手順になります。
現場では、ブレーカーに札を掛けて作業者名と作業内容を書いておくのが実務的です。
エアコン洗浄では、水を使いながら電動の高圧洗浄機を動かします。足元は濡れています。
労働安全衛生規則第三百三十三条は、電動機械器具のうち、対地電圧が百五十ボルトを超える移動式・可搬式のもの、または水等導電性の高い液体によって湿潤している場所等で使用する移動式・可搬式のものについて、感電防止用漏電しゃ断装置を接続しなければならないと定めています。
漏電しゃ断装置の接続が困難なときは、機械器具の金属製外わく等を接地する等の措置が求められます。
現場でできることは単純です。漏電遮断器付きの延長コードを使う、機器のアース線をつなぐ、濡れた床にコードのジョイントを置かない。この三つです。
当社の場合、業務用エアコン一台の分解洗浄にかかる時間は、機種により九十分から百八十分ほどです。
内訳は、おおよそこうなります。化粧パネルとフィルターの取り外しに十分から二十分、養生に二十分から四十分、洗浄に三十分から六十分、すすぎと排水処理に十分から二十分、乾燥確認と組み立て、試運転に二十分から四十分。
洗っている時間より、養生と組み立てのほうが長い現場も珍しくありません。
家庭用の壁掛けエアコンが六十分から九十分程度であることを考えると、二倍前後。天井カセット型で「一台三十分」という見積りが出てきたら、どこかの工程が省かれていると考えたほうが自然です。
参考までに、当社の業務用エアコンクリーニングで洗浄範囲としているのは次のとおりです。
外装カバー、グリル、フィルター、ドレンパン、ファン、アルミフィン及び内部、ドレンポンプ、備品全般。
ドレンパンとドレンポンプまで含めているのは、ここが法令で点検を求められている場所であり、かつ漏水事故の起点になる場所だからです。
洗浄後には、防カビスプレーの施工も行っています。
事前に確認させていただきたい点がいくつかあります。
電気と水道水を使用します。作業時間は機種により九十分から百八十分ほどです。
エアコンを洗浄する際、脚立を置きますので、畳一枚ほどのスペースが必要です。
エアコン用の高圧洗浄機を使用するので、掃除機程度の音が発生します。
エアコンカバーやフィルターなどを洗浄するために、浴室またはベランダをお借りします。
試運転時に破損や故障の恐れがあると確認できた場合は、作業を承れないことがあります。
エアコンの設置箇所の天井や壁面から五センチ以下の隙間しかない場合、十分なエアコン分解ができないことがあるので「部分洗浄」または作業を承ることができません。
室外機は、設置場所により洗浄を承れない場合があります。
現地調査とお見積りは無料ですが、事前に次が分かっていると話が早くなります。
エアコンの台数。
ノーマルタイプか、お掃除機能付きか。
エアコンの型番(本体の下部に記載があります)。
天井高と、脚立が置けるかどうか。
希望日。三日ほど候補をいただけるとスムーズです。
公式LINEからご予約いただく場合は、型番の写真を撮って送っていただくと確実です。
天井カセット型は、本体が天井裏に埋め込まれているため、化粧パネルを外して下から上に向かって洗うことになります。跳ね返った水は上、つまり電装ボックスと天井裏へ飛びます。
内部にはドレンポンプとフロートスイッチがあり、家庭用の壁掛けエアコンにはない部品です。ここが漏水事故の起点になります。
作業は高さ二メートル前後の頭上作業であり、労働安全衛生規則の墜落防止(第五百十八条ほか)、脚立の要件(第五百二十八条)が関わります。
電源は切るだけでなく、施錠・表示・監視のいずれかで、上げられない状態にします(考え方は第三百三十九条と同じです)。
濡れた場所で可搬式の電動機器を使うため、感電防止用漏電しゃ断装置が必要です(第三百三十三条)。
作業時間は機種により九十分から百八十分。家庭用の二倍前後です。
株式会社雅堂では、お見積り・現地調査を無料で承っています。台数によりお値引きもございます。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)
製品評価技術基盤機構(NITE) エアコンの内部洗浄による事故に注意
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
業務用エアコンクリーニングのご相談・お見積りは無料です。
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