「同じ日に同じ浴槽から採ったはずなのに、業者によって結果が違う」。ご相談の中で聞くことがあります。検査は、採り方の条件が揃って初めて比べられるものです。
循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルでは、検査精度を最低10CFU/100mLにするため、検水は500mLまたはそれ以上を採取するとされています。
100mLしか採らなければ、そもそも「10CFU/100mL未満」という判定ができる精度になりません。少なく採って不検出だった場合、その不検出は意味が変わってしまいます。
マニュアルでは、塩素が添加されている検水には、その場で25%チオ硫酸ナトリウムを1/500量加えて塩素を中和するとされています。
中和しないまま検査室へ運ぶと、運んでいる間も塩素が菌を殺し続けます。採水した瞬間の状態ではなくなり、移動中に減った分まで結果に乗ります。実際より良い数字が出ることになります。
保管・搬送温度は6〜18℃(10℃前後が望ましい)とし、直射日光と熱を避けることとされています。
夏場に車内へ置いたまま数時間、というのはこの条件から外れます。採ったあとの扱いまで含めて、はじめて検査です。
検査方法は、冷却遠心濃縮法またはろ過濃縮法のいずれかによることとされています。
検査を依頼するときは、この方法で行われているかを確認しておくと確実です。価格だけで選ぶと、条件を満たしていない検査に当たることがあります。
・浴槽水:いま利用者が触れている水の状態が分かる
・循環配管やろ過器:菌の供給元があるかどうかが分かる
・シャワーや打たせ湯:エアロゾルとして吸い込む水の状態が分かる
・貯湯槽や上がり湯:給湯側に問題があるかどうかが分かる
浴槽水だけを採って不検出だった場合、それは「いまこの浴槽の水には出ていない」という意味です。配管の中まで保証したものではありません。再発を繰り返している施設では、採る場所を増やすと原因が見えることがあります。
・毎日完全換水型:1年に1回以上
・連日使用型:1年に2回以上
・連日使用型で、浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合:1年に4回以上
判定基準は、レジオネラ属菌が検出されないこと(10CFU/100mL未満)です。
採水日時、採水した場所、採水量、中和の有無、搬送温度。これらを残しておくと、次に何かあったときの手がかりになります。
保健所から経過の説明を求められたときにも、この記録があるかどうかで話の進み方が変わります。数字だけの成績書が積み上がっていても、条件が分からなければ比べようがありません。
厚生労働省『循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルについて』
雅堂では、検査の結果と採水の条件、そして配管内部の状態を合わせて確認したうえで、次に何をすべきかをご提案しています。「検査は毎年出しているが、何を意味しているのか分からない」という段階でも構いませんので、一度ご相談ください。
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執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月14日