塩素が使えない浴槽は、何で消毒すればいいのか

「うちは源泉の泉質の関係で、塩素をそのまま使えない」。ご相談の中で出てくる話です。では消毒しなくてよいのかというと、そうではありません。公的資料は、塩素が使えない場合の道筋まで示しています。

結論:塩素が使えない浴槽にも、公的に認められた代わりの方法がある

公衆浴場における衛生等管理要領は、浴槽水の消毒を塩素系薬剤で行うことを基本としたうえで、それが適当でない場合の扱いを別に定めています。「塩素が使えないから消毒はしない」という選択肢は、そこにはありません。

まず、塩素系薬剤が使えないとされるのはどんな場合か

要領が挙げているのは、次のような場合です。

・低pHの泉質で、塩素系薬剤を入れると有毒な塩素ガスが発生するおそれがある場合

・有機質を多く含む泉質で、消毒剤の投入が困難な場合

・循環配管を使用しない浴槽で、流量が多く遊離残留塩素濃度を保つことが困難な場合

この場合、要領は浴槽水を毎日完全に換水し、浴槽・ろ過器・循環配管を十分に清掃・消毒することによって生物膜の生成を防止することとしています。薬剤で抑えられないぶん、物理的に落とす側の負担が増える、という構造です。

高pHの泉質には、モノクロラミン

要領では、高pHの泉質についてはモノクロラミン消毒によることとされています。理由は、濃度管理が容易で、十分な消毒効果が期待できるからです。

濃度の目安も示されていて、モノクロラミンの場合は3mg/L程度を保つこととされています。遊離残留塩素の「通常0.4mg/L程度、最大1mg/Lを超えないよう努める」とは桁が違うので、同じ感覚で管理しないでください。

オゾン・紫外線・銀イオンは「それだけでは足りない」

ここがいちばん誤解されやすいところです。要領では、オゾン殺菌・紫外線殺菌・銀イオン殺菌・光触媒などを用いる場合には、塩素消毒を併用する等、適切な衛生措置を行うこととされています。装置を入れれば塩素をやめられる、という書き方はされていません。

さらに、オゾン殺菌等の塩素消毒以外の消毒方法を用いる場合には、レジオネラ属菌の検査を行い、あらかじめ検証しておくこととされています。「装置があるから大丈夫」ではなく、その浴槽で実際に効いていることを検査で確かめてから運用に入る、という順番です。

装置ごとに、見るところが違う

・オゾン:高濃度のオゾンは人体に有害です。活性炭による廃オゾンの処理を行うなどして、浴槽水中にオゾンを含んだ気泡が存在しないようにすることとされています。

・紫外線:透過率、浴槽水の温度、照射比等を考慮して十分な照射量であること。またランプのガラス管が汚れると効力が落ちるため、常時ガラス面の清浄を保つよう管理することとされています。

紫外線は「点いていれば効いている」ではありません。ガラス面が曇れば、同じ電気を使いながら効果だけが落ちます。点検のときは、ランプの点灯確認ではなくガラス面の状態を見てください。

塩素以外で運用するなら、検査は年4回以上

要領では、連日使用型の浴槽で浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合、水質検査は1年に4回以上とされています。塩素消毒の場合の1年に2回以上に対して、倍の頻度です。

頻度が上がるのは、代わりの方法が劣っているからではありません。残留性のある塩素と違い、装置を通ったあとの水がどうなっているかを数字で確かめる必要があるからです。

消毒剤の投入口の位置も決まっている

要領では、浴槽水の消毒に用いる塩素系薬剤の注入口又は投入口は、浴槽水がろ過器内に入る直前に設置されていることとされています。

ろ過器の後ろで入れると、ろ過器とその手前の配管は消毒されないまま残ります。ろ過材そのものが菌のすみかになっている施設では、ここが効いてきます。図面ではなく、実際の配管で位置を確認してみてください。

どの方法を選んでも、生物膜だけは別問題

ここまでのどの方法にも共通するのは、消毒剤が効くのは水であって、配管の内壁にできた生物膜の奥までは届かないということです。生物膜が残っている限り、そこから菌が供給され続けます。

消毒方法を見直しても再発が止まらない場合、原因は薬剤の選択ではなく、落としきれていない生物膜のほうにあります。

まず確認したいこと

・いま使っている消毒方法と、その濃度の管理記録

・塩素以外の方法を使っている場合、導入時にレジオネラ属菌の検査で効果を検証したか

・塩素系薬剤の投入口が、ろ過器の直前にあるか

・紫外線ランプのガラス面の状態、オゾンの廃オゾン処理の状態

・検査の頻度が、いまの消毒方法に見合っているか

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出典

厚生労働省『公衆浴場における衛生等管理要領』

厚生労働省『循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルについて』

雅堂では、泉質や設備の条件に合わせて、いまの消毒方法で足りているかを確認したうえで、配管洗浄と点検の計画をご提案しています。「塩素が使えない浴槽で、どう管理すればよいか分からない」という段階でも構いませんので、一度ご相談ください。

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執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)

更新日:2026年9月14日