自主管理マニュアルと点検表は、何を書けばいいのか

保健所の立入で「自主管理マニュアルはありますか」と聞かれて、詰まってしまった。そういうご相談をときどきいただきます。検査はきちんと出しているし、清掃もしている。ただ、それを書いた文書がない。今回は、その文書に何を書けばいいのかという話です。

結論:指針が求めているのは三つだけ

厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」は、自主管理について一文しか書いていません。

「施設の管理者は、自主管理を行うため、自主管理手引書及び点検表を作成して、従業者等に周知徹底するとともに、施設の管理者又は従業者の中から日常の衛生管理に係る責任者を定めることが必要である。」

短い一文ですが、要素は三つあります。①手引書と点検表を作ること。②それを従業者に周知徹底すること。③日常の衛生管理の責任者を定めること。分厚い文書を作れとは、どこにも書かれていません。

要領も、同じことを別の言い方で書いている

「公衆浴場における衛生等管理要領」も、ほぼ同じ内容を営業者の務めとして置いています。

「営業者は、本要領に基づき、自主管理マニュアル及びその点検表を作成し、従業者に周知徹底すること。」

責任者についても、「営業者は、自らが責任者となり又は従業者のうちから責任者を定めること。責任者は、責任をもって衛生等の管理に努めること」とされています。営業者自身が責任者を兼ねてよいと明記されているのは、小規模な施設にとって実務的な書き方です。

点検表の項目は、頻度で分けると自然に決まる

毎日やること。浴槽水の遊離残留塩素の測定、集毛器の清掃と消毒、湯温の確認、浴槽の清掃。毎日完全換水型なら、換水そのものも入ります。

週に一回以上やること。ろ過器の逆洗浄と、ろ過器・循環配管の生物膜の除去と消毒。水位計配管の消毒。連日使用型の浴槽水の換水。使用頻度の低いシャワーの通水。

月に一回やること。冷却塔や加湿装置がある施設は、その点検がここに入ります。貯湯槽の底部の排水も、この頻度で組んでいる施設が多いです。

年に一回以上やること。浴槽水の水質検査。ろ過器と配管の中の生物膜の状況の点検。貯湯槽の清掃。冷却塔と水管の清掃。シャワーヘッドとホースの洗浄・消毒。

この四つの枠に、自分の施設にある設備を当てはめていけば、点検表の骨格はできあがります。逆に、どの枠にも入らない設備が出てきたら、それが管理から抜けている設備です。

大事なのは、様式の美しさではなく、毎日つける欄が実際に毎日埋まることです。項目が多すぎる点検表は、必ず途中で止まります。

「三年間」という数字

要領は、記録の保存期間を具体的に書いています。

原湯・原水・上がり用湯・上がり用水および浴槽水の水質検査結果は「検査の日から三年間保管すること」。

遊離残留塩素の測定結果も「当該測定結果は検査の日から三年間保管すること」。

サウナの室内の温度と湿度の測定記録、電気浴器の検査記録も、三年以上の保存とされています。つまり点検表は、書いたら終わりではなく、三年分が手元にある状態が求められています。ファイルの置き場所まで決めておいたほうが確実です。

責任者を「定める」とはどういうことか

責任者を決める、という項目は軽く見られがちですが、これは名前を紙に書くという意味です。

決まっていない施設では、たいてい「気づいた人がやる」運用になっています。それでも回っている間はいいのですが、担当者が変わったとき、繁忙期に入ったとき、最初に抜けるのが日常の測定です。

名前を書いておけば、少なくとも「誰が埋めるべき欄か」がはっきりします。営業者が兼ねてよいので、一人で回している施設でも書いておいてください。

従業者の健康管理も、要領に入っている

意外と知られていないのが、この二つです。

「従業者は、一年に一回以上健康診断を受けることが望ましいこと」

「感染症の患者又はその疑いのある者は業務に従事させないこと」。設備の話ばかりが注目されますが、要領は人についても書いています。マニュアルを作るなら、この項目も一行入れておくと、文書として自然にまとまります。

保健所が見ているのは、様式ではなく連続性

立入検査で点検表を見せたとき、担当者がどこを見るか。私が現場で見ている限り、様式の体裁ではありません。

見られるのは、欄が連続して埋まっているかどうかです。一か月分がまとめて同じ筆跡で書かれている表と、毎日少しずつ字の調子が違う表とでは、意味がまったく違います。

それから、異常があった日に何が書いてあるか。塩素が基準を下回った日に空欄のままなのか、「再投入」と書いてあるのか。後者であれば、管理が動いていることの証拠になります。

記録は、きれいに揃えるためのものではありません。何かあったときに、自分たちを守るためのものです。

作り方の順番

まず、施設にある設備を書き出します。浴槽、ろ過器、集毛器、循環配管、貯湯槽、シャワー、冷却塔、加湿装置、水位計配管。図面があれば見ながら、なければ現物をたどりながら。

次に、それぞれについて、毎日・週・月・年のどの枠で何をするかを決めます。決める根拠は、指針と要領に書いてあります。自分で考えて決めなければならない部分は、思ったより多くありません。

それを一枚の表にしたものが点検表です。そして、その表の使い方と、異常が出たときにどうするかを書いたものが自主管理マニュアルです。

最後に、責任者の名前を書き、従業者に見せて、置き場所を決めます。ここまでやって、指針の言う「作成して、周知徹底する」が終わります。

分量としては、マニュアルは数ページで十分です。厚くすると、誰も読まなくなります。

まとめ

自主管理マニュアルと点検表は、新しく何かを始めるための文書ではありません。すでにやっていることを頻度ごとに並べて、誰がやるかを書いて、三年分残せる形にしたものです。

保健所に出すためだけの書類にすると、続きません。逆に、日常の管理が動いていれば、書類は自然にできます。順番としては、管理が先で、文書は後です。

あわせて読みたい

保健所に見せることになるのは、検査成績書だけではない

レジオネラ対策は、突き詰めると三つしかない

使っていない配管は、消毒が届かない場所になる

レジオネラ対策・配管洗浄

出典

レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針(厚生労働省)

公衆浴場における衛生等管理要領(厚生労働省)

雅堂では、配管洗浄をお引き受けした施設に、作業内容と使用薬剤・濃度・循環時間を記載した作業報告書をお渡ししています。年一回の「配管内の生物膜の状況の点検」の記録として、そのまま保管していただけます。

お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636

▶ 無料の現場診断・お見積りのご相談はこちら

執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)

更新日:2026年9月15日