天井カセット型を一台洗うと、黒い水がバケツに何杯か出ます。
あれは、どこへ行っているのか。
見積書にこの項目が書かれていることは、あまりありません。作業が終わって業者が帰ったあと、廃液がどこへ流れたかを確認する人も、ほとんどいません。
ただ、法令には答えが書いてあります。この記事では、下水道法と廃棄物処理法の条文から、洗浄廃液の行き先を整理します。発注する側が見積書のどこを見ればいいかも、あわせて書きます。
洗浄で出た水の行き先は、原則として二つです。
一つ、建物の排水設備を通して公共下水道(または浄化槽)へ流す。
二つ、回収して持ち帰り、廃棄物として処理する。
この二つ以外の選択肢、つまり敷地の側溝、雨水桝、植え込み、駐車場の排水溝へ流す、というのは、どちらにも当たりません。それは投棄です。
まず下水道法です。第十条第一項は、公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水設備を設置しなければならない、としています。
建物にある排水管は、この排水設備です。洗浄業者がそこに水を流すということは、建物側の設備を使うということでもあります。
では何を流していいのか。同法第十二条第一項は、こう定めています。
公共下水道管理者は、著しく公共下水道若しくは流域下水道の施設の機能を妨げ、又は公共下水道若しくは流域下水道の施設を損傷するおそれのある下水を継続して排除して公共下水道を使用する者に対し、政令で定める基準に従い、条例で、下水による障害を除去するために必要な施設(以下「除害施設」という。)を設け、又は必要な措置をしなければならない旨を定めることができる
つまり、具体的な数値は条例に置かれています。その条例が超えてはならない範囲を定めているのが、下水道法施行令第九条第一項です。掲げられている項目を挙げます。
温度が四十五度以上であるもの。
水素イオン濃度が、水素指数五以下又は九以上であるもの。
ノルマルヘキサン抽出物質含有量のうち、鉱油類含有量が一リットルにつき五ミリグラムを超えるもの。
同じく動植物油脂類含有量が、一リットルにつき三十ミリグラムを超えるもの。
よう素消費量が一リットルにつき二百二十ミリグラム以上であるもの。
これらに該当する下水を継続して流す使用者に対しては、条例で除害施設の設置等を求めることができる、という構造です。
鉱油類が一リットルあたり五ミリグラム、という数字に注目してください。
厨房の近くに付いている天井カセット型を洗うと、廃液は油を含みます。フライヤーの上のフードと同じ空気を吸い続けた機器です。目視で油膜が浮くような水は、この数字とは桁が違います。
水素イオン濃度も同様です。アルカリ性の洗浄剤を使えばpHは上がり、酸性の洗浄剤を使えば下がります。希釈せずにそのまま流せば、五以下または九以上に触れます。
だから、業務用エアコンの洗浄廃液を「そのまま流していい」と一般化することはできません。使った薬剤と、機器が置かれていた環境によって変わります。
そして基準の数値そのものは自治体の条例で決まります。同じ作業でも、市が違えば扱いが変わることがあります。現場のある自治体の下水道条例を確認するのが本筋です。
なお、水質汚濁防止法にも近い規定があります。同法第十二条第一項は、排出水を排出する者は、その汚染状態が当該特定事業場の排水口において排水基準に適合しない排出水を排出してはならない、としています。ただしこちらは「特定施設」を設置する事業場が対象で、エアコン洗浄という作業そのものが特定施設になるわけではありません。関係するのは、もともと特定施設のある工場や事業場で作業する場合です。
もう一方の経路です。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第四項第一号は、産業廃棄物を、事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物、と定義しています。
洗浄で出た沈殿物は汚泥に、酸性の廃液は廃酸に、アルカリ性の廃液は廃アルカリに当たり得ます。事業所のエアコンを洗った水は、事業活動に伴つて生じた廃棄物です。
そして同法第三条第一項です。
事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない
「自らの責任において」と書かれています。処理を他人に委託しても、責任が移るわけではありません。
委託する場合の手続きが、同法第十二条の三です。第一項は、産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、当該産業廃棄物の引渡しと同時に、運搬を受託した者に対し、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければならない、としています。
交付した写しの保存期間は、同条第二項と施行規則で決まっています。施行規則には、法第十二条の三第二項の環境省令で定める期間は、五年とする、とあります。
運搬や処分が終わると、受託者から写しが送り返されます。第六項は、管理票交付者は、送付を受けたときは、当該運搬又は処分が終了したことを当該管理票の写しにより確認し、かつ、当該管理票の写しを当該送付を受けた日から環境省令で定める期間保存しなければならない、としています。
つまり、出しっぱなしではなく、戻ってきたことを確認して五年保管する、という流れです。
同法第十六条は、一行です。
何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない
罰則は同法第二十五条にあります。同条第一項は、次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する、とし、その号の一つに、第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者、が挙げられています。
雨水桝に流す、というのは、これに当たり得ます。雨水桝は下水処理場へは行きません。多くの場合、そのまま川へ出ます。
ここからは当社の話です。
天井カセット型を一台洗うと、機種と汚れ方によりますが、数リットルから十数リットルの廃液が出ます。台数が増えれば、一件の現場で百リットルを超えることもあります。
中身は、粉じん、油、カビ、そして使った洗浄剤です。見た目は黒か茶色で、においがあります。
当社の段取りは、こうしています。
一つ、養生の時点で受け皿を作る。洗浄カバーからホースで一箇所に集めます。床にこぼしてモップで拭く、という作業は、廃液を分散させるだけです。
二つ、汚れの重い分をこす。フィルターと沈殿で固形分を分けます。ここで残ったものが汚泥です。
三つ、流す先を作業前に決めておく。建物が公共下水道につながっているのか、浄化槽なのか。どの桝に流すのか。これを施主に確認します。
四つ、浄化槽の建物では、原則として持ち帰ります。浄化槽は微生物で汚水を処理する設備です。塩素系やアルカリ性の洗浄剤をまとまった量流し込むと、処理機能そのものを落とします。
五つ、厨房まわりの機器で油が多い現場は、持ち帰りに切り替えます。鉱油類の基準は先に書いたとおりです。
六つ、作業報告書に廃液の扱いを書く。どこへ流したか、持ち帰ったか。これが記録になります。
三つ挙げます。
一つ、見積書に廃液の処理が書いてあるか。項目そのものが無い場合、その業者は流す前提です。どこへ流すつもりかを聞いてください。
二つ、建物の排水が公共下水道か、浄化槽か。管理会社かオーナーに確認できます。浄化槽なら、流させない判断があり得ます。
三つ、持ち帰る場合、マニフェストは出るか。産業廃棄物として処理するなら、管理票が発生します。誰が排出事業者になるのかも、契約前に決めておくほうが安全です。建物の所有者が排出事業者となるのか、施工業者となるのかは、契約の内容によって変わります。ここは曖昧なまま進めないほうがいい部分です。
当社は、聞かれれば答えますし、聞かれなくても作業前にお伝えします。理由は単純で、あとで問題になったときに困るのは建物の側だからです。
洗浄廃液の行き先は、下水へ流すか、廃棄物として処理するかの二つです。側溝や雨水桝へ流すのは、どちらでもありません。
下水道法第十条第一項は、排水区域内の土地の所有者等に排水設備の設置を義務づけています。第十二条第一項は、施設の機能を妨げるおそれのある下水について、条例で除害施設等を求められるとしています。
その条例の範囲を定めるのが施行令第九条第一項で、温度四十五度以上、水素指数五以下又は九以上、鉱油類一リットルにつき五ミリグラム超、動植物油脂類三十ミリグラム超、よう素消費量二百二十ミリグラム以上が挙げられています。具体の数値は自治体の条例によります。
廃棄物処理法第二条第四項第一号は、汚泥、廃酸、廃アルカリ等を産業廃棄物としています。第三条第一項は、事業者に、自らの責任において適正に処理することを求めています。
委託する場合は第十二条の三のマニフェストが必要で、写しの保存期間は五年です。
第十六条は、みだりに廃棄物を捨てることを禁じ、第二十五条は五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金、又は併科と定めています。
厨房まわりの機器は油を多く含みます。浄化槽の建物では、洗浄剤が処理機能を落とします。この二つは、持ち帰りを検討する場面です。
株式会社雅堂では、業務用エアコンの分解洗浄を行っています。廃液の扱いは作業前にお伝えし、作業報告書にも記載します。浄化槽の建物や厨房まわりの機器では、持ち帰っての処理をご提案する場合があります。
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廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月16日