入れ替え。テナントの退去。建物の解体。
業務用エアコンを外す場面は、だいたいこの三つです。そしてどの場面でも、順番と、書類を出す人は同じです。
ところが現場では、「工事屋さんが全部やってくれる」と思われていることが多い。法律を読むと、そうは書かれていません。
この記事では、フロン排出抑制法の条文から、業務用エアコンを外すときに誰が何をするのかを順に整理します。記録を何年残すかは別の記事に書きましたので、ここでは手順と責任の所在を扱います。
法律の正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」です。フロン排出抑制法と呼ばれています。
同法第二条第三項は、第一種特定製品を、次に掲げる機器のうち、業務用の機器(一般消費者が通常生活の用に供する機器以外の機器をいう。)であって、冷媒としてフロン類が充塡されているもの、と定義しています。
そして掲げられているのは二つです。一つ、エアコンディショナー。二つ、冷蔵機器及び冷凍機器(冷蔵又は冷凍の機能を有する自動販売機を含む。)。
天井カセット型、天吊り型、床置きパッケージ、ビル用マルチ。これらは第一種特定製品です。厨房の冷蔵庫、ショーケース、製氷機も入ります。
家庭用のルームエアコンは、こちらではありません。特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の対象です。同法第二条第四項は、特定家庭用機器を、一般消費者が通常生活の用に供する電気機械器具その他の機械器具であって、政令で定めるもの、としています。
その政令が特定家庭用機器再商品化法施行令第一条で、第一号がユニット形エアコンディショナー(ウィンド形エアコンディショナー又は室内ユニットが壁掛け形若しくは床置き形であるセパレート形エアコンディショナーに限る。)です。
迷いやすいのは、事務所や店舗についている壁掛けタイプです。見た目は家庭用でも、業務用として販売された機種であれば第一種特定製品です。銘板と仕様書で確認してください。ここを間違えると、出す書類がまるごと変わります。
ここがいちばん誤解されている点です。
同法第二条第八項は、管理者を、フロン類使用製品の所有者その他フロン類使用製品の使用等を管理する責任を有する者、と定義しています。
同じ項は、廃棄等を、フロン類使用製品を廃棄すること又はフロン類使用製品の全部若しくは一部を原材料若しくは部品その他の製品の一部として利用することを目的として有償若しくは無償で譲渡すること、としています。
捨てるだけではありません。譲ることも廃棄等です。
そのうえで第四十一条です。第一種特定製品の廃棄等を行おうとする第一種特定製品の管理者(以下「第一種特定製品廃棄等実施者」という。)は、主務省令で定めるところにより、第一種フロン類充塡回収業者が当該第一種特定製品にフロン類が充塡されていないことを確認した場合を除き、自ら又は他の者に委託して、第一種フロン類充塡回収業者に対し、当該第一種特定製品に冷媒として充塡されているフロン類を引き渡さなければならない。
義務を負うのは、建物の所有者や、その機器を使っている事業者です。取り外す工事業者ではありません。
罰則もあります。第百四条第二号は、第四十一条の規定に違反して、第一種特定製品の廃棄等を行った者を、五十万円以下の罰金としています。
第二条第十項は、第一種フロン類充塡回収業者を、第一種フロン類充塡回収業を行うことについて第二十七条第一項の登録を受けた者、としています。登録するのは都道府県知事です。
第三十条第一項は、第二十七条第一項の登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う、としています。
そして第百三条第一号は、第二十七条第一項の規定に違反して登録を受けないでフロン類の充塡又は回収を業として行った者を、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金としています。
発注する側が確認するのは、登録番号と、登録した都道府県名です。見積書か作業報告書に書かれているか。書かれていなければ聞いてください。
回収を頼むとき、先に紙を出すのは管理者の側です。
第四十三条第一項は、自らフロン類を引き渡すときは、回収依頼書を交付しなければならない、としています。記載事項は、管理者の氏名又は名称及び住所、引渡しに係るフロン類が充塡されている第一種特定製品の種類及び数、引渡しを受ける第一種フロン類充塡回収業者の氏名又は名称及び住所、その他主務省令で定める事項です。
施行規則が加えているのは、書面の交付年月日、機器の所在、そして引渡しを受ける業者の登録番号です。登録番号を書く欄が最初からある、ということです。
同条第二項は、引渡しを他の者に委託する場合の書面を委託確認書としています。工事業者を通して回収業者に出すときは、こちらです。
第百五条第二号は、回収依頼書若しくは委託確認書を交付せず、又は虚偽の記載をして交付した者を、三十万円以下の罰金としています。
回収が終わると、業者から紙が返ってきます。
第四十五条第一項は、第一種フロン類充塡回収業者は、第一種特定製品廃棄等実施者から直接にフロン類を引き取ったときは、引取証明書に主務省令で定める事項を記載し、当該第一種特定製品廃棄等実施者に当該引取証明書を交付しなければならない、としています。委託を経由した場合は第二項で、管理者に送付されます。
同条第三項は、管理者は、当該引渡しが終了したことを当該引取証明書により確認し、かつ、保存しなければならない、としています。
期限が決まっています。施行規則第四十六条は、法第四十五条第四項の主務省令で定める期間は、回収依頼書又は委託確認書の交付の日から三十日とする、とし、ただし書で、解体工事の契約に伴い委託確認書を交付する場合には、委託確認書の交付の日から九十日とする、としています。
そして第四十五条第四項です。管理者は、その期間内に引取証明書の交付若しくは送付を受けないとき、又は記載されていない引取証明書若しくは虚偽の記載のある引取証明書の交付若しくは送付を受けたときは、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
報告のしかたは施行規則第四十七条にあり、速やかに、交付した回収依頼書の写し又は委託確認書の写しを提出して行うものとする、とされています。
つまり、証明書が来ないことも管理者の側の引き金です。待っているだけでは義務を果たしたことになりません。
解体工事には、もう一段階あります。
第四十二条第一項は、建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する建設工事を発注しようとする管理者から直接その解体工事を請け負おうとする建設業を営む者(特定解体工事元請業者)は、当該建築物その他の工作物における第一種特定製品の設置の有無について確認を行うとともに、当該特定解体工事発注者に対し、当該確認の結果について、主務省令で定める事項を記載した書面を交付して説明しなければならない、としています。
書面に書くことは省令で決まっています。交付年月日、元請業者の氏名又は名称及び住所、発注者の氏名又は名称及び住所、解体工事の名称及び場所、そして建築物その他の工作物における第一種特定製品の設置の有無の確認結果。
保存期間も同じ省令にあり、法第四十二条第一項及び第三項の主務省令で定める期間は、三年とする、とされています。元請が持つ写しも、発注者が受け取った書面も、三年です。
同条第二項は、特定解体工事発注者は、特定解体工事元請業者が行う第一種特定製品の設置の有無についての確認に協力しなければならない、としています。
注意してほしいのは、元請が確認して説明したからといって、フロンの引渡義務が元請に移るわけではない、という点です。第四十一条の義務は管理者に残ります。
機器そのものの持ち出しにも条文があります。
第四十五条の二第四項は、何人も、第四十一条の規定により第一種フロン類充塡回収業者が第一種特定製品にフロン類が充塡されていないことを確認した場合又は第一項若しくは第二項の規定による引取証明書の写しの交付若しくは回付を受けた場合その他主務省令で定める場合のほか、第一種特定製品の引取り等を行ってはならない、としています。
第百四条第三号は、これに違反して引取り等を行った者を、五十万円以下の罰金としています。
そして第四十五条の二第一項は、管理者が機器を引き渡すときは、引取証明書の写しを交付しなければならない、としています。
スクラップ業者に渡すときも、中古機として売るときも、紙が機器と一緒に動きます。
フロンを抜いたあとの機器は、金属くずなどの産業廃棄物です。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第三条第一項は、事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない、としています。委託するならマニフェストです。
洗浄の廃液のときと同じ考え方です。法律が二本かかっている、というだけで、やることは並んでいます。
当社が立ち会うときに確認している順です。
一つ、銘板を見る。第一種特定製品かどうか、台数、冷媒の種類と充塡量。
二つ、回収業者を決める。登録番号と登録した都道府県を控える。
三つ、回収依頼書(直接頼むとき)か委託確認書(工事業者を通すとき)を交付する。写しを残す。
四つ、回収作業。立ち会えるなら立ち会う。
五つ、引取証明書を受け取る。三十日、解体なら九十日を過ぎたら、待たずに都道府県知事へ報告する。
六つ、本体を出すときに、引取証明書の写しを渡す。
七つ、産業廃棄物のマニフェストを回す。
この七つが、一つの工事の中に入っています。工程表に書いておくと抜けません。
四つ挙げます。
一つ、「工事業者が全部やってくれる」。作業はそうでも、義務者と書類の名義は管理者です。回収依頼書に書くのは管理者の名前です。
二つ、「入れ替えだから廃棄ではない」。廃棄等には譲渡が含まれます。下取りに出す場合も、その扱いを先に確認してください。
三つ、「解体業者に任せた」。元請の事前確認は元請の義務ですが、フロンの引渡義務は発注者に残ります。両方を進める必要があります。
四つ、「証明書がまだ来ない」。期間を過ぎたら報告する、という条文があります。督促だけで終わらせないでください。
フロン排出抑制法第二条第三項の第一種特定製品は、業務用のエアコンディショナー、冷蔵機器及び冷凍機器で、冷媒としてフロン類が充塡されているものです。家庭用ルームエアコンは家電リサイクル法の側です。
第四十一条により、廃棄等を行おうとする管理者が、自ら又は他の者に委託して、第一種フロン類充塡回収業者にフロン類を引き渡さなければなりません。違反は第百四条第二号で五十万円以下の罰金です。
回収できるのは第二十七条第一項の登録を受けた業者だけで、登録は五年ごとの更新です。無登録での回収は第百三条第一号で一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金です。
第四十三条により、管理者が回収依頼書または委託確認書を交付します。第四十五条により引取証明書が返ってきて、施行規則第四十六条の三十日(解体工事に伴う委託確認書なら九十日)を過ぎても来ないときは、第四十五条第四項により都道府県知事へ報告します。
解体工事では、第四十二条第一項により元請業者が設置の有無を確認して発注者に書面で説明し、その書面は三年保存です。ただしフロンの引渡義務は発注者に残ります。
第四十五条の二第四項により、引取証明書の写しなしに機器を引き取ることはできません。本体は産業廃棄物として処理します。
株式会社雅堂では、業務用エアコンの洗浄を行っています。入れ替えや撤去に立ち会う場面もありますので、この手順と書類の段取りについてもご相談いただけます。洗うより入れ替えたほうがよいと判断した場合は、そのようにお伝えします。
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フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)
フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)
特定解体工事元請業者が特定解体工事発注者に交付する書面の記載事項等に関する省令(e-Gov法令検索)
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月16日