雅堂が実際に対応した案件です。スポーツクラブの浴室で、保健所からの連絡でレジオネラが発覚しました。配管洗浄そのものは90分で終わり、数字はその日のうちに戻りました。それでも浴室が使えるようになるまでには、累積で20日近くかかっています。なぜそうなるのかを、実測値とともに書きます。施設が特定されないよう、施設名・地域・時期は伏せます。
施設はスポーツクラブの浴室、対象は男性用の浴槽と循環配管です。
きっかけは保健所からの連絡でした。レジオネラ症の患者が発生し、その調査の中で施設に連絡が入っています。施設の自主検査で見つかったわけではありません。
作業は循環配管の洗浄。薬剤は湯泡美オールインワンを使用し、所要時間は90分です。
効果確認は浴槽水のATP測定。作業前が102RLU、作業後が7RLU。約93%の減少で、いずれも同じ日の測定です。
浴室の利用停止は、累積で約20日でした。
レジオネラ症は感染症法の四類感染症に分類されていて、診断した医師はただちに最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられています。届け出るのは医師であって、施設ではありません。
つまり施設に最初に届くのは、患者が出たという知らせではなく、保健所からの連絡です。今回もその形でした。
潜伏期間は2〜10日とされています。そこから受診、診断、届出と進むので、連絡が来た時点で、問題になった入浴日からはかなりの時間が経っています。
この順番は施設側では変えられません。だからできることは、連絡が来る前に手を打っておくことだけです。
作業は循環配管への薬剤投入と循環です。所要は90分。特別に急いだわけではなく、循環配管の洗浄としては標準的な時間です。
洗浄中、浴槽の水面は泡と浮遊物で埋まりました。配管の内側に付いていたものが剥がれて浮いてきた状態です。
ここが大事なところで、この汚れは浴槽を磨いても出てきません。出てくるのは、配管に薬剤を回したときだけです。目に見える範囲がきれいな施設でも、同じことが起こります。
効果確認にはルミテスター(ATP測定器)を使いました。検体に含まれる有機物の量をRLUという単位で示す機器で、その場で数値が出ます。
今回は浴槽水を測りました。作業前が102RLU、作業後が7RLU。約93%の減少です。
厚生労働省の「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」も、洗浄の効果確認としてATP拭き取り検査を挙げ、清浄度基準値として1,000RLUという数字を示しています。ただしこれは拭き取り検体に対する基準なので、今回の浴槽水の数値とそのまま比べることはできません。
それでも浴槽水で測る意味はあります。作業が終わったその場で、お客様と一緒に数字を確認できるからです。
ここは誤解されやすいので、はっきり書いておきます。
ATPは有機物の量、つまり汚れの量を示す指標です。菌の種類までは分かりません。ATPが低いことは「汚れが少ない」ことの証明であって、「レジオネラがいない」ことの証明にはなりません。
実際、この施設では患者が出ています。ATPの数字だけを見て安心することはできない、というのが現場から言えることです。
ですから雅堂では、ATPは作業の効果をその場で確認するための指標として使い、レジオネラ属菌の有無は培養検査で確認する、という使い分けをしています。
洗浄は90分で終わり、数字はその日のうちに戻りました。では、なぜ浴室は20日近く使えなかったのか。
レジオネラ属菌の検査が、培養法だからです。
ATPはその場で結果が出ます。しかしレジオネラ属菌がいるかどうかは、検体を培養して菌が生えるかどうかを見るしかなく、結果が出るまでに日数がかかります。今回も、洗浄後の確認検査の結果が出るまでにさらに10日ほどかかりました。
保健所の連絡を受けてから停止していた期間と合わせて、累積で約20日。スポーツクラブの浴室が20日使えないというのは、会員への影響として決して小さくありません。
この事例でいちばん重要なのは、ここだと考えています。
洗浄を早く終わらせても、培養検査にかかる日数は変わりません。業者を急がせても、保健所の調査や確認検査の日程は短縮できません。
短縮できるのは、「そもそも保健所から連絡が来る状態を作らないこと」だけです。
費用の話をするなら、配管洗浄1回の費用と、浴室が20日止まることによる損失は、そもそも比較の対象になりません。
一つめは、定期的な配管洗浄です。洗浄で出てきた汚れは、一日や二日でついたものではありません。使い続けていれば必ず溜まるものなので、溜まりきる前に落とすという考え方になります。
二つめは、記録です。遊離残留塩素の測定、清掃、換水、水質検査。保健所の調査で最初に見られるのはここです。日付と数字が連続して残っていることが、そのまま説明の材料になります。
三つめは、配管図面の把握です。使っていない系統や、洗浄が届いていない枝管があると、洗っても残ります。
いずれも、連絡が来てから始めたのでは間に合いません。
最初にすることは、消毒ではありません。
厚生労働省のマニュアルは、問題が生じた時には設備の使用を中止し、浴槽水等の消毒を行わずそのままの状態で保存し、保健所等の指示を待つこと、としています。
先に消毒してしまうと、環境から採った菌と患者から分離した菌の遺伝子型を比較できなくなり、感染源の特定ができなくなるためです。
洗浄に入るのは、保健所の調査と採水が済んでからです。順番を間違えないでください。
スポーツクラブの浴室。保健所からの連絡で発覚。配管洗浄は90分。浴槽水のATPは102RLUから7RLUへ、その日のうちに改善しました。
それでも、レジオネラ属菌の培養検査を含めて、浴室が使えるようになるまで累積で約20日かかりました。
止まる期間を短くする方法は、洗浄を速くすることではありません。止まらなくて済む状態を保っておくことです。
株式会社雅堂では、循環式浴槽と配管の洗浄、洗浄後のATP測定による効果確認、点検計画のご提案を行っています。検出が出てからでも、出る前でも対応します。
現在の点検表と配管図面を見せていただければ、どこから手をつけるべきかを整理してお伝えします。
お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636
循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル(厚生労働省)
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月15日