プールの水は、年に一回レジオネラを測ることになっている
浴槽の相談は多く来ます。プールの相談は、それに比べると少ない。
ただ、中身はよく似ています。循環させて、ろ過して、塩素で消毒する。配管の長さも、生物膜のつきやすさも、浴槽と変わりません。
そして基準は、きちんと文書になっています。
この記事では、厚生労働省の「遊泳用プールの衛生基準について」と、学校環境衛生基準から、プールの水質と検査の頻度を整理します。レジオネラの条項がどこにかかっているのかも、正確に書きます。
基準は、通知の形で置かれている
根拠になる文書は、厚生労働省健康局長通知「遊泳用プールの衛生基準について」(平成十九年五月二十八日健発第〇五二八〇〇三号)です。
ここで一点、注意があります。これは法律そのものではなく、通知です。実際の規制は、都道府県や政令市の条例で行われています。ですから、自分の施設のある自治体のプール条例も確認する必要があります。
通知は、その条例の内容をそろえるための目安として機能しています。多くの自治体の条例が、この数字を採っています。
学校のプールは別系統です。学校保健安全法第六条に基づく学校環境衛生基準が適用されます。こちらは後半に書きます。
プール水の水質基準
通知が定める項目と数値です。
水素イオン濃度は、pH値五・八以上八・六以下であること。
濁度は、二度以下であること。
過マンガン酸カリウム消費量は、十二mg/L以下であること。
遊離残留塩素濃度は、〇・四mg/L以上であること。また、一・〇mg/L以下であることが望ましいこと。
塩素消毒に代えて二酸化塩素により消毒を行う場合には、二酸化塩素濃度は〇・一mg/L以上〇・四mg/L以下であること。
大腸菌は、検出されないこと。
一般細菌は、二〇〇CFU/mL以下であること。
総トリハロメタンは、暫定目標値としておおむね〇・二mg/L以下が望ましいこと。
遊離残留塩素の下限〇・四mg/Lは、公衆浴場の循環式浴槽で言われる数字と同じ水準です。上限が一・〇mg/L以下とされているのは、高すぎれば目や皮膚への刺激が出るからです。
測る回数も、書いてある
基準値だけでなく、頻度も指定されています。
遊離残留塩素濃度については、少なくとも毎日午前中一回以上及び午後二回以上の測定。
水素イオン濃度、濁度、過マンガン酸カリウム消費量、大腸菌及び一般細菌については、毎月一回以上の測定。
総トリハロメタンについては、毎年一回以上の測定。
つまり塩素は一日三回以上です。開場前に測って終わり、では足りません。利用者が入れば有機物が持ち込まれ、塩素は消費されます。
記録も指定があります。通知は、プール管理日誌を作成し、使用時間、気温又は室温、水温、新規補給水量、水質検査結果、設備の点検及び整備の状況、利用者数、事故の状況等を記録し、これを三年以上保管すること、としています。
三年です。浴場の記録保管と同じ長さです。
レジオネラの条項は、プール本体にかかっていない
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
通知のレジオネラに関する条項は、こう書かれています。対象は、気泡浴槽、採暖槽等の設備その他のエアロゾルを発生させやすい設備又は、水温が比較的高めの設備がある場合です。
そのうえで、その設備の中の水について、レジオネラ属菌の検査を年一回以上行い、レジオネラ属菌が検出されないことを確認すること、としています。
検査方法は、冷却遠心濃縮法又はろ過濃縮法のいずれかによること、とされています。
読み替えると、こうなります。
プール本体の水は、水温が低く、塩素が入っています。レジオネラが増えやすい条件ではありません。
危ないのは、併設されている温かい設備のほうです。ジャグジー、気泡浴槽、採暖槽、打たせ水、シャワー。エアロゾルが出て、温度が高い。浴槽の記事で書いてきた条件が、そのままそろいます。
だから年一回の検査は、プールの水ではなく、そちらの設備の水に対して求められています。ここを取り違えて、プール本体だけ検査して安心している施設があります。
循環ろ過装置について書かれていること
装置についても数字があります。
処理能力は、一時間につきプール本体の水の容量に循環水量を加えた全容量の六分の一以上を処理する能力とされています。
そして、循環ろ過装置の出口における濁度が、〇・五度以下であること。
入替え式のプールについては、いわゆる入替え式プールにおいては、少なくとも五日に一回、プール水の全量を入れ替えること、とされています。
さらに、全換水時には、汚染物を換水後のプールに移行させないよう必ず清掃するとともに、と続きます。
水を抜いて入れ直すだけでは足りない、という指示です。抜いたときに清掃する。これは浴槽と同じ考え方です。
管理する人を置く、とも書いてある
通知は、プールにおける安全で衛生的な管理及び運営にあたる管理責任者を置くこと、また、プールの衛生及び管理の実務を担当する衛生管理者を置くこと、としています。
安全側の責任者と、衛生の実務担当者。二つの役割が分けて書かれています。
学校のプールは、別の基準
学校保健安全法第六条に基づく学校環境衛生基準では、水泳プールについて次のとおりです。
遊離残留塩素は、〇・四mg/L以上であること。また、一・〇mg/L以下であることが望ましい。
pH値は、五・八以上八・六以下であること。
大腸菌は、検出されないこと。
一般細菌は、一mL中二〇〇コロニー以下であること。
濁度は、二度以下であること。
有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)は、十二mg/L以下であること。
総トリハロメタンは、〇・二mg/L以下であることが望ましい。
循環ろ過装置の出口における濁度は、〇・五度以下であること。また、〇・一度以下であることが望ましい。
数値は遊泳用プールの衛生基準とほぼ同じです。違うのは検査回数の書き方で、遊離残留塩素からトリハロメタン以外の項目までは、使用日の積算が三十日以内ごとに一回。総トリハロメタンは使用期間中の適切な時期に一回以上。循環ろ過装置の処理水は毎学年一回とされています。
学校のプールは夏の数か月しか使いません。だから「毎月」ではなく「使用日の積算が三十日以内ごと」という書き方になっています。
浴槽で起きることは、プールでも起きる
ここからは当社の話です。
循環式の設備で起きることは、水の温度が違っても構造は同じです。
配管の内側に生物膜がつきます。塩素は水の中では効きますが、膜の内側までは届きにくい。浴槽で繰り返し見てきたことです。
ろ材が劣化します。砂ろ過なら砂の固結、カートリッジなら目詰まり。出口の濁度〇・五度以下という数字は、ここが機能しているかの指標になります。
集毛器に髪と皮脂がたまります。ここは温度が上がりやすく、洗い残しが起きやすい場所です。
そして、プール特有の問題があります。オフシーズンです。
使わない期間の配管
屋外プールは、年の大半を使いません。学校のプールなら、使うのは実質ひと月ほどです。
このとき、配管の中に水が残ります。塩素は抜けます。温度は外気に従って上がります。
使っていない配管は、消毒が届かない場所になる。これは浴場の記事でも書いたことですが、プールではその期間が桁違いに長くなります。
だから、シーズン開始前に配管を洗浄してから水を張る、という手順に意味があります。水質検査で合格しても、配管の中の膜はそのままだからです。
シーズンの前後でやること
順に書きます。
開始前。配管の洗浄。ろ材の点検または交換。集毛器の分解清掃。併設の気泡浴槽や採暖槽があれば、そこのレジオネラ検査。そして水を張って、残留塩素が保てるかを確認します。
シーズン中。遊離残留塩素は一日三回以上。月一回の水質検査。プール管理日誌に記録して三年保管。
終了後。水を抜いたら、配管に水を残さないこと。抜けない構造なら、抜けない場所がどこかを図面で把握しておくこと。翌シーズンの洗浄で、そこを重点的に処理します。
この三段構えにすると、翌年の立ち上がりが楽になります。
まとめ
遊泳用プールの衛生基準は、厚生労働省健康局長通知(平成十九年五月二十八日健発第〇五二八〇〇三号)として示されています。法律ではなく通知で、実際の規制は自治体の条例によります。
水質はpH五・八以上八・六以下、濁度二度以下、過マンガン酸カリウム消費量十二mg/L以下、遊離残留塩素〇・四mg/L以上(一・〇mg/L以下が望ましい)、大腸菌不検出、一般細菌二〇〇CFU/mL以下、総トリハロメタン暫定目標値おおむね〇・二mg/L以下が望ましい、とされています。
検査頻度は、遊離残留塩素が少なくとも毎日午前中一回以上及び午後二回以上、その他の項目が毎月一回以上、総トリハロメタンが毎年一回以上です。プール管理日誌は三年以上保管です。
レジオネラの年一回以上の検査は、プール本体ではなく、気泡浴槽、採暖槽等の設備その他のエアロゾルを発生させやすい設備又は水温が比較的高めの設備の水に対して求められています。
循環ろ過装置は、一時間につき全容量の六分の一以上を処理する能力とされ、出口の濁度は〇・五度以下です。入替え式プールは少なくとも五日に一回全量を入れ替え、そのときに必ず清掃することとされています。
学校のプールは学校環境衛生基準が適用され、数値はほぼ同じ、検査回数は使用日の積算が三十日以内ごとに一回などとされています。
そして、オフシーズンの配管が、プール特有の弱点です。
株式会社雅堂では、循環式の浴槽・配管の洗浄を行っています。プールの循環配管、併設の気泡浴槽や採暖槽についても、構造は同じですのでご相談いただけます。シーズン開始前の洗浄と、併設設備のレジオネラ検査の段取りからお話しします。
お電話受付 9:00-20:00 / 080-7744-9636
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出典
執筆:株式会社雅堂 宮下知也(一般社団法人抗菌防カビ清掃技術研究所 副理事長兼講師)
更新日:2026年9月16日